CHILDHOOD
少年時代
音楽の道へ進むきっかけになった原体験
天道清貴は、世界で初めて音楽CDが市販された1982年、5人兄弟の長男として、宮城県仙台市に生まれました。
幼年期は絵を描くことが好きで、当時テレビで放送していた「キャプテン翼」を描きながら、サッカー選手を目指して毎日ボールを追いかけていました。
もともと小児喘息などもあり、身体が弱かった天道は7歳の時、盲腸の手術で医師の判断ミスから腸閉塞を患います。度重なる手術と病気の再発、長期化する入院生活の中にあって、募る不安を和らげる唯一の救いは、持ち込んだラジカセから流れる音楽だったのです。この時の体験を天道は「好きな歌を聴き、音の世界に没頭することで、それまで感じていた不安が消え、救われていくような感覚があった」と振り返ります。
音楽によって心の安らぎを得たその経験は、少年天道にとって、興味の対象をサッカーから音楽へ振り向けるのに十分なものでした。これは天道の原体験として、今でも活動の根幹に深く関わっています。すなわち「不安を抱える誰かを歌によって励まし、癒しや安らぎを届ける」こと。天道本人はこれを自らの「使命」と呼んでいます。
ゴスペルに出会った少年時代
様々な音楽との出会いの中、一際強く惹かれた「ゴスペル」という音楽。
幼少期、父の仕事の都合で転校が多いこともあり、学校になかなか馴染めないことも多くありました。そんな中、入院生活での音楽体験や、小さい頃から聴かされていた母親の子守唄の影響もあり、"自分を救ってくれる音楽"への興味が強くなり、親に頼んでクラシックピアノを習わせてもらいました。当時好きでよく聴いていたのはマライア・キャリー、スティービー・ワンダー、セリーヌ・ディオン、ホイットニー・ヒューストン。新聞配達で貯めたお金で中古CDショップを周り、世界中の音楽に出会い、自然と歌を口ずさむようになった日々の中で、一番惹かれたのが、好きになったアーティストたちの多くがルーツに持つ、ゴスペルといわれる音楽でした。
「ゴスペルを聴くと言葉が分からなくても涙が自然と溢れてきた。どこか当時の自分が感じていた疎外感を代弁してくれていたような気がする」と天道は言う。そして魂の叫びにも似たゴスペルの唱法「メリスマ」に強く惹かれた天道は、自己流でメリスマを練習、習得。言葉がなくとも、声と音で豊かな感情を表現する天道の基礎は、幼少期に出会ったゴスペルによって培われたのです。